自分の体に合ったベッドや布団がない

自分ででベッドやふとんなどの寝具の調節を開始したのは7年ほど前になりますが、当時からなかなか大変な思いをしました。でも今では、苦労話も自分から話せるようになりました。

ベッドや布団は、枕のように頭頸部だけに焦点を絞って合わせるものと違い、胸、腰、骨盤、足のいずれにも適合する必要があります。そのためには、何をどうやって組み合わせるべきか、まったくの暗中模索でした。

そんなモヤモヤした気持ちを吹っ切りたいと、ある日、前向きにこう考えることにしました。「理屈で考えていても仕方がない。いろんな人に研究の協力者になっていただき、一緒に試行錯誤しよう」と。

早速、協力を快諾いただいた人にご自宅からふとんを持参してもらい、自らのふとんの上で枕の調節を行いました。

軟らかいふとんにダメ出しをし、硬過ぎるふとんには羊毛の厚手の敷きパッドを使うようにアドバイスしました。

駐車場では自家用車からふとんを運び込む光景が見かけられたのですから、ご近所では、あそこは不思議だと、噂になっていたかもしれません。

ベッドを使用している人の場合、さすがにベッドは持参していただけません。寝室を見せてくれる人のお宅に私が直接お邪魔して、寝姿を観察させていただきました。

ともかく、私はベッドのことをたくさん知りたいと思っていました。出張などでホテルや旅館に泊まる日は、部屋に入ったらまずベッドに直行です。

シーツをはがしてベッドマットの商品名、コイル数、ばねのへたり具合や表層ウレタンの傷み具合を入念にチェックします。

最後は実際に寝返りを打って感触を確認していました。こうして調べたベッド数は100を超えました。必ず写真を撮り、マイライブラリーに保管しています。

この地道な作業の積み重ねで、ふとんやベッド調節のノウハウが蓄積していきました。

その一方で、問題点を調節しながら使用するのではなく、根本的に一人ひとりに適合するベッドがなぜないのだろうかと考えるようになりました。

そういうベッドが存在しないのなら自分が創ろうと思い始めていたのです。

 

枕の有効性に限界を感じる

私は枕外来や枕研究所において、黙々と手作り枕の調節や枕計測を行ってきました。

枕の効果がいかに素晴らしいかは、毎日向き合う患者様の表情を見れば一目瞭然です。

しかし、診療所でどんなに枕を調節して適合しても、自宅に帰って一晩寝ると調子が悪くなるという患者様がいます。そう訴える患者様の一人に、診察の時にあるものをご自宅から持ってきてもらい、とうとうその原因を突き止めることができたのです。

それはふとんでした。30万円もしたというご自慢の敷きぶとんは、真っ赤なカバーに金の糸で刺繍が施された豪華なものです。しかし、その敷きぶとんの上に調節した枕を乗せても、ふかふか過ぎてまったく枕と適合しませんでした。

そこで、この患者様には、安くてもいいのでしっかり寝返りの打てる綿の敷きぶとんに替えるようにアドバイスしました。次の診察では綿の敷きぶとんを持参され、枕との適食がすっかり改善していました。

せっかく枕を3~5mm単位で微調節しても、20年以上も使用してコイルの慯んだベッドや、腰が1cm以上も沈んでしまうウレタンのマットレスやふかふかの敷きぶとんでは、寝返りが打ちにくいのです。

この状態では、私たちが目指す「至適睡眠姿勢」とはいえません。至適睡眠姿勢とは、簡潔にいうと、頭から首、胸腰、骨盤、足までを含めて、いかにスムーズに寝返りできる姿勢かということです。

私は枕だけで至適睡眠姿勢を作ることの限界を思い知らされました。